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フジノキシノブ Lepisorus kuratae T.Fujiw., Seriz. et Watano

フジノキシノブはクロノキシノブとともに2018年に記載された種である。従来、ノキシノブ(広義)には2倍体・3倍体・4倍体があることが知られていたが、そのうち2倍体がノキシノブ、4倍体がクロノキシノブおよびフジノキシノブとして整理された。3倍体はノキシノブとクロノキシノブの雑種、あるいはノキシノブとフジノキシノブの雑種が含まれていたと推測される。

本種はノキシノブとツクシノキシノブのゲノムを持っているとされ、形態は両種の中間的な印象がある。渓流沿いなどでは直径5cm程度の細い枝にフジノキシノブが柔らかな葉をぶら下げていることがあり、ツクシノキシノブっぽい雰囲気を感じる。

本種を識別できる人が少ないため、正確な分布域はハッキリとしないが、少なくとも関東では珍しい種ではないと思う。栃木県の標高700m付近から千葉県南部の低地まで幅広く見ている。

ノキシノブとの区別は難しいが、葉が幅広く・薄く・柔らかいこと、根茎が細いこと、葉が混み合っていて、しばしば扇状に葉を広げることを抑えれば、野外でもだいたいの検討は付けられる。ただし、乾燥した場所ではノキシノブ並みに葉が分厚くなる個体もあって紛らわしい。雑種もある。

 

葉裏の鱗片に荒い鋸歯がある点でノキシノブと区別できるというが、ノキシノブの葉裏鱗片にも小さな鋸歯が見られることがあり(ただしフジとは雰囲気が異なる)、多数の個体を顕微鏡下で観察した経験がないと判断が結構難しい。典型的なフジノキシノブの特徴を抑えずに観察した場合、ノキシノブをフジノキシノブに誤同定してしまうと思う。私が観察したかぎり、フジノキシノブの葉裏鱗片は先端が尾状になりやすい。

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中型・幅広な個体 千葉県鎌ヶ谷市 2020.10.18

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中型個体。葉の幅が少し狭い 千葉県鎌ヶ谷市 2020.10.18

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垂直な面では垂れ下がって着く 千葉県鎌ヶ谷市 2020.9.8

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扇状に葉を広げる 千葉県市川市 2020.10.27

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光沢が弱く、黄緑色をしていることが多い 栃木県鹿沼市 2020.8.15

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フジノキシノブ(葉身8cm前後)の葉裏の鱗片。順に、ソーラス近く・葉身中部(×3)・葉身下部のもの。鋸歯が目立ち、先端は尾状の傾向が強い

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ノキシノブ(葉身20cm前後)の葉裏の鱗片。順に、ソーラス近く・葉身やや上部・葉身中部(×2)・葉身下部のもの。鱗片によっては鋸歯が見られるが、フジノキシノブのものとは印象が異なる

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